日本料理 落柿

湯けむりのそばで、季節を味わう
ー 平谷温泉とともに歩む日本料理 落柿 ー

目次

季節に寄り添い、旬を伝える
日本料理を、もっと身近に

鹿島から大村方面へ444号線の山あいの道を進み、住宅街や田園を抜けて車で約20分。日本料理 落柿へ向かう道のりは、すでに小さな旅のはじまりです。門をくぐり、木漏れ日さす道を進むと、趣きある建物が迎えてくれます。

お食事は3つのコースがあり、旬を彩る日本料理でテーブルが飾られます。お造りはどのコースでも味わうことができ、メイン料理をはじめとする品々は、四季の移ろいとともに旬へと姿を変えていきます。器ひとつひとつにも趣があり、どの料理に箸を進めるか悩む贅沢な時間が訪れます。食の細くなってきた方でも召し上がりやすく、「落柿の料理をまた食べたい」と、家族で訪れられる方もいるそうです。

落柿の由来は、「柿は熟して落ちる時が一番美味しい。いつも一番美味しい瞬間をお届けしたい」という思いから名付けられました。

客席も多彩で、テーブル、個室、宴会の大広間もあり、別棟の茶室では結納を取り行い、その後両家で料理を楽しんで親睦を深める場としても利用されています。日本料理と聞くと、お高い印象をもつ人もいるかもしれませんが、1人3000円台から楽しむことができます。記念日や大切な人を招く際、自宅では味わうことができない非日常を楽しめることでしょう。

時を重ねた素材が語る、おもてなし

山の静けさの中に現れる落ち着いた店構えは、何百年も前からそこにあるように見えますが、実は建物が完成して21年。先代の坂口修さんは、落柿の隣にある平谷温泉(ひらたに)で育ちました。温泉には、料理が必要だと考えるようになり、20歳の頃に全国各地を巡る板前修行の道を歩み始めます。各地で料理を提供する中で、「日本一の料理を山の中で安価に提供したい、より多くの人に親しんでほしい」という思いから、日本料理 落柿(らくし)は誕生しました。

料理へのこだわりはさることながら、外観・内観ともに、細部までこだわった空間になっています。先代は料理人になる前は、宮大工に憧れていたこともあり、鹿島の市街地にあった古民家を解体するご縁が舞い込み、その古材を活用して、落柿は完成しました。至るところに飾られている農機具やランプは、何百年も前からこの場所で使われていたのではないかと感じるものばかりですが、先代が集めたコレクション。店内を見渡すと、懐かしい道具に出会えるかもしれません。

もともと、雑木林であった場所を切り開いて作られた落柿の隣には、7代続く温泉があります。約200年前に初代貞兵衛によって、けもの道が開拓され、多くの人が訪れる湯湯治場(ゆとうじば)として始まりました。目の前の国道444号線ができるまでは、米などを担いで山を越え、長崎や佐賀から多くの人たちが傷を癒しに訪れていたそうです。

山吹の湯に使われている「山吹」は、修さんが初めて修行した店の名

交流を大切にしながら、
生まれたあらたな挑戦

7代目の山領 幾代(やまりょう いくよ)さんとその母である〇〇さんが温泉と2025年に新しくできた湯屋を切り盛りし、日本料理 落柿では、6代目の坂口 修さんと山領さんのご主人である〇〇さんが料理を担っています。

先代の体調不良をきっかけに、幾代さんが7代目となり、まもなく4年が過ぎようとしています。もともとは経理の面でサポートしながら、子育てをされていました。当時を振り返りながら、「なにからなにまで大変でした。最初の頃は、数字に強かったこともあり、まずは、数字を基本に色々と考えることから始めました。
施設の老朽化や新型コロナウイルスの影響もあって、お客様が徐々に減ってきていました。自分が主体的に考えるようになって気づいたのは、訪れてくださるお客様との接点が少なくなっていたことでした。どうにかして、お客様と時間を昔のようにつくることができないかと考えるようになりました」

平谷温泉は昔、湯治宿であったため、長期滞在している方々との交流が自然と生まれる場所でした。湯治宿は、病気やケガの治療、健康回復を目的として温泉地に長期滞在する宿のことです。〇〇さんは大阪出身、料理修行中の修さんと出会い、鹿島に住処を移しました。街で育った〇〇さんにとっては、驚きの連続で言葉もわからず大阪に帰りたいと思い、涙する日もあったそうです。そんな中、寂しさを満たしてくれたのは、湯治宿を訪れる人たちとの時間でした。

そうした思いから、昨年12月に誕生したのがONSEN COFFEE 湯屋です。食後や湯上りの人たちにくつろいでもらいながら、お客様の気持ちにそっと触れられる場所を目指しています。

温泉の湯を使うコーヒーは、サイフォンでしか抽出できない
客席には歴代の名が刻まれている

訪れる人の時間に、
静かに寄り添う場所

2024年に家族風呂が完成し、2025年12月にONSEN COFFEE 湯屋がオープン。さらに、2027年にはプライベートサウナ、2029年にはかつて両親が運営していた茅葺き屋根の宿泊施設「庵」の営業再開も計画しています。

「代表になって、一度で大規模な改修を行うつもりでした。計画途中で感じたのが、訪れるお客様に必要なことを提供するには、自分が理解し納得し、協力業者さんに、自分の考えを明確に伝えることが必要だと考えるようになりました。短期戦で一度にやってしまえると手続きなどは楽ですが、今はじっくり長期戦で行うことが、必要で計画を見直しました」

活動の源について尋ねると、「やっぱり、お客様の『美味しかった』や『温泉が気持ちよかった』というお声ですよね。いろいろなお話をお伺いできるのも、とても楽しいです。これから10年は、めちゃくちゃ働きますよ」と、幾代さんはそう笑顔で答えてくれました。お客様の声に耳を傾け、さらなる邁進をはかる覚悟が、その言葉の中にはありました。

山の中にある温泉と料理は、これからも少しずつ姿を変えながら、人を迎え続けていきます。訪れたとき、また新しい落柿に出会えるかもしれません。

店名日本料理 落柿(らくし)
営業時間・定休日11:30-14:30
16:30-19:30 (夜は完全予約制)
電話番号0954-64-2321
住所佐賀県鹿島市大字山浦丙3869-1
備考Instagram
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