食堂 金時

記憶をたどりながら、
生の声をもとに一歩ずつ。
たぐり寄せた味と道

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まるで黄金の輝き!
食欲倍増の名物カツ丼

JR肥前浜駅から歩いてすぐ右側に見えてくるのが、1930年創業の食堂「金時」です。歩いているうちに、いつの間にかタイムスリップしていたのではと錯覚するほどの味わい深い佇まいで、どこかホッとする懐かしさを感じます。
この味わい深さは出そうと思って出せるものではなく、長い歳月の中で自然と醸し出されたものであり、100年近く続くお店だからこそ体感できるもの。入り口の扉の前に立ち、昭和の時代へワープするような感覚で店内へ。

まずはこれを食べなければ!という3大名物メニューが、カツ丼・ちゃんぽん・皿うどん。3つもあってすごく嬉しいですが、迷います(笑)
その中でも、特に個性派スタイルで知られているのが、カツ丼です。たまごの上にカツがのった一般的なスタイルではなく、カツの上にふんわりたまご!黄金の輝きに、食欲がかき立てられます!!豚骨ベースのだしと、たまごのまろやかな美味しさが相性抜群で、あっという間に完食。このカツ丼をめがけて帰省される長年のファンの方々もいらっしゃるほど、唯一無二の名物です。

やさしい味わいの豚骨スープと野菜の甘みが心身にじんわり。ボリュームたっぷりで嬉しい「ちゃんぽん」も名物メニュー

刻まれた記憶と存続への願いが、
手探りの中での道しるべ。

1930年から続く老舗食堂で、現在の店主は3代目の小林研治(こばやしけんじ)さん。「祖父が創業して父が継ぎ、私が3代目をさせていただいています。祖父が始めた頃は簡易的なメニューが中心だったようですが、父の代でカツ丼・ちゃんぽん・皿うどんといった代表的メニューが定着していきました。私自身は学生時代に洗い物や下準備などのお手伝いで入ってはいたものの、店を継ぐという意識までは特にありませんでしたね」と振り返ります。

シャッターメーカーの営業として働いていた小林さんでしたが、2代目だったお父様が倒れ、「金時」を閉めるか継ぐかの決断に迫られます。「手伝い程度しか関わっていなかった自分が継いでも、一年もたないかもしれない。しかし継がなければ、確実に店はなくなってしまう。一度きりの人生ですし、やってみようと決めました」 

「引き継いでいくと決めたものの、もう父から直接教えてもらうことはできませんし、レシピなどの資料も何も残っていない状態だったので、味を再現するために本当に手探りでした」と語る小林さん。
 幼い頃から小林さん自身に刻まれてきた舌の記憶、調味料などの分量を量っていたお手伝い時代の記憶、そしてお父様が厨房で調理している姿を何となく眺めていたときの景色の記憶をたどり、答え合わせの日々が続きます。
 そうして、味の再現に取り組むと同時に、親戚が営むラーメン店や定食屋で飲食店運営の基本も学び、2002年3月から3代目として「金時」を再開。小林さんが継ぐと決めた後も、長年通う常連の方々や当時のスタッフメンバーさんたちが離れずに見守って応援してくれたことが、とても励みになったそうです。「これまで来てくださっていたお客様が離れていってしまうのではないかと不安もありましたが、すごく応援してくださった。やはり当時のスタッフの皆さんが残ってくれて、店内の顔ぶれが変わらなかったので安心していただけたところもよかったと思います」

3代目として入る前に、ご親戚のお店で修行を重ねた小林さん。同じく鹿島の老舗「御食事処 千鶴」さんも、修行先のひとつだったそうです!

味の再現についても、昔から通う常連の方々の存在がとても大きかったそうです。小林さんがつくった料理を食べ、「ここが違う」「これが足りない」「もっとこういう感じ」というようにフィードバック。その生の声をとり入れながら、修正とフィードバックを繰り返し、“金時の美味しさ”へと一歩ずつ近づいていきました。
 そうしてついに、何もかも手探りだった状況を乗り越え、限りなく再現できたと納得できる味に到達。その背景には、小林さんをはじめ、たくさんの人たちの心に刻まれた温かな記憶と、お店の存続を願う強い気持ちがありました。

愛されてきた味を、1日でも長く。
今日も、誰かの“懐かしい”に。

3代目を継ぐと決めたときから現在に至るまでずっと大切にしている想いは、「愛されてきた味を、1日でも長く」。
 「できる限り元気に動けるよう、健康に気をつけています。当たり前にあるものは決して当たり前ではなく、感謝の毎日ですね。調理をするときに心がけているのは、美味しくつくることと、早くご提供すること。かなりシンプルではありますが、それがとても大事なことだと思います」と語る小林さん。「あっ、もちろん昔からのカツ丼・ちゃんぽん・皿うどんが看板メニューではあるんですが、私が考案した焼き飯や野菜炒めもけっこう好評いただいているんですよ(笑)」と照れくさそうに微笑む姿も印象的でした。 

どこかホッとする昭和のレトロ感。懐かしい味と空間を楽しみに、何世代にもわたって多くの方々が訪れます。

「現在は、姉と甥がときどきサポートで入ってくれています。お客様の中には、懐かしい味ということで帰省の楽しみにしてくださっている方や、ご自身のお子さんやお孫さんまで連れてきてくださる方も多く、とても嬉しいですね。続けてきてよかったと感じます。これからも、奇をてらわず、良い意味で懐かしくレトロなお店であり続けたいです」
 懸命に守り継いだ味が、今日も誰かの懐かしい思い出へとつながっていきます。

店名食堂 金時(きんとき)
営業時間・定休日月曜:11:30〜15:00
木曜:17:00〜21:00
金土日:11:30〜15:00/17:00〜21:00
*オーダーストップは昼・夜共に閉店の30分前
定休日:火・水
電話番号0954-63-2815
住所鹿島市浜町931-2
備考Instagram
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