cafe 16

山あいの分校で出会う、
やさしいカレーとcafe16の物語

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苦手から生まれた、やさしい味

「こどもって、正直なんですよね。美味しくなかったら、もう食べないって言うんです」
そう話すのは、ateliershop iro / cafe16(カフェ イロ)の店主、橋本香織さん。

鹿島市の山あいにある旧能古見小学校・浅浦分校。木造校舎には、どこか懐かしい空気が流れています。
2016年に閉校したこの場所は、4年の時を経て、地域の人の声とともに再び灯りがともりました。その校舎に、やさしく漂うのがカレーの香り。けれど、このカレーは“スパイス好き”のために生まれたものではありませんでした。

「実は、スパイスの強いカレーが苦手だったんです。自分でも食べやすいカレーを作れないかなと思ったのがきっかけでした」

どうすればやさしい味になるのか。どうすれば、こどもが最後まで食べてくれるのか。何度も作り、何度も味を確かめながら、少しずつ形になっていきました。地元の旬の野菜と、鈴山農園さんのお米。春の新玉ねぎはみずみずしく、冬とはまた違う甘みがあります。季節の変化が、ひと皿の中に溶け込んでいます。バターチキンやキーマは辛みなく仕上げ、店頭限定のココナッツカレーや、イベント出店限定のグリーンカレーは、少しだけ背伸びした辛味があります。そして、やさしい味の中に、ときどき現れる心地よい食感。それも、cafe16の小さな秘密です。

佐賀県のご当地グルメ「シシリアンライス」もランチで食べられます。

ひと言が背中を押した、イロのはじまり

cafe16よりも先に始まったのが、ateliershop iro。結婚を機に人吉市へ移り、子育ての日々を送っていました。「2人目が1歳になるくらいの頃、何かしたいと思うようになって、子育ても大切ですが、ずっと仕事をしていたので、やはり働きたいという気持ちがありました」

そんなある日、行きつけの美容室で何気なく手に取った、手作りの服に目が留まります。「作れますか?」というひと言が、背中を押し、気がつけば、服を作り始めていました。中学生の頃から布を買い、自分の好きな服を作っていた香織さんは、服飾の学校へ進学し、その後アパレルショップで店長やバイヤーを経験してきました。そして今度は、自分のこどもに着せたい服を、自分の手で作るようになりました。

同じ思いを持った仲間が集まり、その当時は珍しいマルシェを始め、ついに自身のお店を開くことになりました。いろんなご縁が重なり、現在は浅浦分校でateliershop iroを運営しています。

初めて作って販売したのは、カボチャパンツ
分校の教室がアトリエ兼店舗になっている

「作る側の色があって、それが手に取った人の色に変わっていくように、という思いをお店の“iro”に込めました。“16”と書いてイロと読むcafe16の名前も、父親が車のナンバーにつけてくれた数字から生まれました」

小さな挑戦を重ねて、今のcafe16へ

最初の出店は、カレーではありませんでした。

「マルシェで美味しいコーヒーが飲みたかったんです。でも当時は出店が少なくて、だったら自分で出そうと思いました。仮設営業許可の事を調べて、コーヒーをマルシェで出すようになりました」

そのとき選んだのが、人吉でお店をしていた頃からずっと飲んでいた「まめこやコーヒー」さんの豆でした。
美味しいと心から思えた味。いつもお世話になっていたその一杯を、今度は自分が届ける側になりました。

気になることは調べて実践し、挑戦してきた香織さんに「何か始めたいけど、中々一歩を踏み出せない時にどうしていますか」と伺うと、
「小さくても、一歩踏み出してみる。急に1が10や100になることはなくて。でも、やってみないと分からないことがあります」

グリーンカレーも、最初は驚くほど美味しくなかったそうです。
「正直、本当にびっくりしました。でも悔しくて。どうしたらいいのか何度も試しました」
失敗も、試行錯誤も、積み重ねてきました。その時間が、今の味につながっています。

木の校舎に漂うカレーの香り。
その一皿には、やさしさと、挑戦の時間が溶け込んでいます。

食感を楽しませてくれる、ある食材も、変わらずそこにあります。
「それは何か」
その答えを確かめに、山あいの分校を訪れてみてください。

まちなかでこどもたちに会うと、「カレー屋さん」と声をかけられ、その呼び名に、香織さんは少し照れるそうです。
店名cafe16 (カフェ イロ)
営業時間・定休日ランチ: 金〜日曜 11:30~16:00
アパレル・雑貨販売: 水〜日曜 10:00〜17:00
定休日:月〜木曜
電話番号080-5243-4494
住所佐賀県鹿島市三河内甲3023(旧浅浦分校)
備考Instagram
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