江戸後期から続く、
無添加のオーダーメイド。
“わが家の味”を支え続けて
米を預かり、こうじや味噌に委託加工。
“わが家の味”になっていく
発酵文化の薫るまち・鹿島には、江戸時代後期の1850年代から続く「山口こうじ屋」さんがあります。
「時代とともに○○屋さんといった感じの店舗が増えてきて、鹿島が栄えていた頃、嬉野から鹿島に移ってきて山口こうじ屋を始めたと聞いています。もしかしたら、こうじづくり、味噌づくりが得意だったのかもしれませんね(笑)」と微笑むのは、6代目の山口正治さん。
こうじと大豆と塩をまぜることで味噌ができますが、こうじづくりにすごく手間がかかるので、そのこうじづくりの工程を委託加工で担ってくれるのが、山口こうじ屋さんです。お米を預けると、こうじに加工してもらえて、自宅での味噌づくりに活用できます。(もちろん、こうじだけでなく、味噌づくりを依頼することもできます!)
また、店舗で販売もされていて、一番人気の「米麦の合わせみそ」を筆頭に、地域の方々から親しまれています。山口こうじ屋さんの味噌は、こうじと大豆と塩だけでつくられる無添加。塩が少なめで、こうじの割合が多く、優しい甘みが特徴です。

理想の味わいを見つけ、
その状態に調整するのも醍醐味。
お店を訪ねると、正治さんと奥様のひとみさんが、味噌について分かりやすく教えてくれました!山口こうじ屋さんのように無添加の味噌の場合、温度によって発酵のスピードが大きく変わり、色と味がどんどん変化していきます。最初は仕込みたての白い味噌、次に淡い黄土色、そして黄土色となり、続いて茶色、最終的にはこげ茶色(茶色やこげ茶色は、甘みが少なめの赤みそですね)に。どの段階の味と香りが好きかは人それぞれなので、しばらく常温保存しながら、お気に入りの色になってきたところで冷蔵庫保管へ切り替えるのがポイントとのこと。冷蔵庫に入れると発酵が遅くなるため、お好みの状態まで発酵を進めて冷蔵庫に切り替えることで、理想の味噌を保てます。

お米を預けて(10kgから)加工を依頼してつくってもらえるということは、つまりは市販品ではなくスペシャルなオーダーメイド。身体に優しく、一番好きな味わいを楽しみ続けられるって、すごく特別感がありますね。味噌づくりや甘酒づくりのワークショップの依頼も多いそうで、とても好評なのが分かります!
ご夫婦で二人三脚、
つくり、つながり、続いていく。
正治さんは高校時代から味噌づくりの手伝いを始め、社会人になってしばらくは別の企業で働き、25歳のときに後継者として戻ってきました。お店のお客様や同業者の方々に教わって成長できたところも大きいそうです。

常に意識しているのは、手を抜かないこと。「麹室の温度管理は特に重要です。お客様が預けてくださったお米それぞれに合わせた管理が必要ですし、ここは冷えている、ここは熱くなっているなどをチェックしながら場所を替え、しっかりと発酵しているかどうかを数時間ごとに確認します」と正治さん。41歳で代表となり、安政年間の創業時から続く技術と歴史を守ってきました。
そして、その正治さんを支えてきたのが、奥様のひとみさんです。周りをパッと明るくする朗らかさで、ひとみさんが更新するインスタも大人気。インスタをきっかけに来店する方も増えています。コロナ禍のとき、どこかに記録を残したい、交流もできたらいいな・・・と思い立って始められたそうです。「SNSに不慣れで分からないことばかりでしたが、とにかく毎日投稿すると決めました。夕方になっても投稿するネタが見つかっていないときは焦りますし、ソワソワします(笑)」と語る笑顔が印象的です。
今後の目標を伺ったところ、「できる限り続けていくことです」と微笑むご夫妻。発酵文化の薫るまち、発酵の魅力や面白さが今日も日常に届けられていきます。
